2001/05/29(火)

デジタルからネオ・アナログへ

 たわごとに近いが、ちょっと前からよく考えていることを書いてみる。

 今、世の中では、なんでもかんでも、デジタル最高、デジタルすばらしいって具合になってしまっているのだが、実はこれからの時代、再び「アナログ」がキーワードになるんじゃないかなと思う。

 どういうことか説明してみよう。このコンピュータ時代、情報の処理法やデジタルへの落し方がより高度化し、大容量のデータを同時に扱えるようになることで、ビットとかバイトとかの最小単位を意識する必要のない(画像・音声といった)巨大データが多くなってきている。そして、そういう大容量データを人間は「うまく、簡単に」操作したい。数字を見せられて、判断して打ち込むなんて方法ではいらいらしてやってられない。もっと直感的に、目を使って、手を使って、声を使って操作したい。たとえば、GUI。たとえばマウス。つまり、振り返ってみると、デジタルの進歩はいつもインターフェースの「アナログ化」と二人三脚なんだ。ウインドウシステムもそうだし、VAIOノートなんかについているダイヤル的なインターフェイスとかもそう。アナログにあったものをメタファーとして再びよみがえらせていたりする。もちろん、根底で動いているのはデジタルだけれども、インターフェースの使いやすさってのは、往々にしてアナログ的なものだったりする。人間がアナログ的な動物である以上、アナログ的なものを必要とするようなのだ。

 ブルートゥースが普及して、ケーブルなしで機器がデータをやりとりするのが普通になったら、この視点はもっと重要になる。というのも、機器はどんどん「リモコン」化し、手で触れるインターフェースとしてどれだけ洗練されているかが一番大切な部分になってくるだろうから。たとえば、ビデオカメラ。今は、テープ関連の機構(つまり記録部分)が絶対に必要なので、値段もあんなにするし、機械もけっこうごついのだけれども、ブルートゥース使って、データを電波でとばし、記録部分はすべてパソコンにまかせるってことにすれば、大きさはぐーんと小さくなる。レンズと操作インターフェースだけしか残らない(値段も1万円くらいになるだろう)。そのときユーザビリティの上で、重要なのは、「アナログ的」にそれがどれだけ使いやすいインターフェースになっているかということなのだ。間違いなく。

 アナログ的インターフェースがどれくらい重要かってことを見るために、もうちょっと例をあげよう。たとえば、車のハンドル。もしあれをハンドルじゃなくて、ボタンで操作するのだとしたら……。ぞっとしますね(もっとも僕は車運転できないけど)。

 まとめ。これからの時代、さまざまな情報を処理するいろんな機械がどんどん新しく出来て、それらの操作を人間はやっていかなくちゃならない。その時、我々は、それぞれの情報処理にぴったりの「アナログ」的インターフェースを見つけ出していく必要がある。電子ブックの新しい形式も発明しなくちゃならないだろうし、Webで一覧性を実現するにはどうすればよいかってのも考えなくっちゃならない。ここで必要になる発想は、「デジタル」ではなくて「アナログ」だよ、絶対にね。時代は「デジタルからネオ・アナログへ」なのだ。

 アナログインターフェース論については、もうちょっと語りたいこともあるのだが(現実世界と違う物理理論に従う世界を操作するすぐれたアナログインターフェースの可能性についてとかね。人間は歴史上だれも持ったことのない新しい直感を獲得できるようになるかもしれない!)、それはまた別の機会に。