2005/03/12(土)

日記

 忙中、無理やり外出。今日Nちゃんが結婚するので。

 しかし、ちょっとタイミング合わず、夜まで少し時間つぶしする必要が発生。

 浅草の町を散歩。とりあえず食事。ふと目についたどぜう飯田屋へ。名店らしい。でもそんな飾ったところもなく、美味しくいただきました。値段もリーズナブルだし、また来たいと思いましたです。

 で、散歩継続。山宮商店なる和傘のお店を発見。卸っぽいんだけど、小売もやってくれるらしい。

 いや、和傘ってほんとにかっこいいですね。和傘も洋傘も基本構造は変わんないんだろうなって思ってたけど、実はちがうんですよ。言うなれば、洋傘が内骨格なら、和傘は外骨格なんです。

 どういうことかというと……和傘の和紙の部分(洋傘の布にあたる)って、閉じる時に洋傘みたいに外に巻きつくんじゃなく、中に畳み込まれるんです。その状態では、外からは油で黒光りした竹の束ねられた姿だけが見えるのです。すごく凛としたフォルムです。

 閉じられている状態では、まだ和紙の部分の色は隠されている。黒光りはしているけれども目に鮮やかという風ではない。

 しかし、いざ、ばっと開くと……一変、目の覚めるような赤だったり緑だったり

 うーんこれが粋ってやつなんですなあ。

 いや、文章で書いてもその魅力がなかなか伝わらないんだけど、実際手にして見てみれば、その構造の持つ幾何学と機能美にしびれますよ。

 江戸っ子っぽいご主人と奥さんが和傘についていろいろ教えてくれました。

 例えば……。

 傘はもともと中国から伝わってきたものだが、和傘にはいくつか改良されている部分があるそうな。骨の関節の組み方もその1つで、その違いは、傘のシルエットの違いとして現れている(和傘は単純な円錐形ではなく、ちょっとふくらむ感じの形をしている)。

 ちなみに、デフレ時代の今、やはり中国製の和傘(?)も売っていたりするのだが、実際この目で見たところ、モノとして落ちるのは明らかでした。

 でも、日本製はやっぱり高いのかといったら、実はそうでもなく一万円以下で買えます。職人さんの手間を考えると絶対安いです。

 そうそう、和傘って、実は持ち方も洋傘とは違うって知ってました? 閉じて持ち歩くときは、取っ手を下にして持つんですよ。洋傘とは逆です。

 この辺、時代劇を注意してみるとちゃんとそうなっているらしいです。まあ、時代考証がいい加減なものも最近では多いようですが。考証がしっかりしていたのは黒澤明。特注の傘を使っていたらしいです。丈の部分がチョンマゲの分だけ今のより長く、骨の部分もツヤ消しになっているやつ。

 ちなみに、この店で売っている傘の骨の数は44本だそうです。昔は48本だったのだけれども、それだと貼る紙が4枚半必要だとかで、4枚ですむ44本になったんだと(このへんの計算の詳細はよくわからない)。

 制作に必要な工程は31。制作期間は1ヵ月程度。でも、あまり最近は数がはけないから、結局竹の骨組みから準備することになったりもして、2ヵ月・3ヵ月もかかることも。こうやって制作が大変なわりに、単価が安く食べていけないから、若い職人さんが育たない。50代の人でも若い部類らしいですよ。

 そういや、某歌舞伎演目では、傘をばさりと切るシーンがあるとのことで、某役者さんは、それにいつも最高級傘を使うことにしているらしい。演じるごとに毎回1本ずつ消費されていってしまうのが、ご主人的には勿体無く思えてしまうとのことで、一度、人づてに「もっと安い傘にしたらどうか」と言ってみたこともあるらしい。

 というわけで、Nちゃんへのプレゼント用の傘(高級←和紙に絹が張ってある)と家用の傘(絹なし)を買いましたよ。嬉しいな。もう日常生活で使うつもりですから。ちなみに寿命は5年くらいらしいです。やっぱ和紙が切れてくるんです。張替えはコスト的に見合わないらしいんで、そうなったら部屋の飾りにしますか。

 この寿命の短さってのが、傘制作という産業の微妙な部分でして、おかげで名人が作った名品というのがいつまでも残るというもんでもなく、そのせいで、伝統工芸であるにも関わらず、昔の傘に関する資料って意外にないんだそうです。漆器とか焼き物ほどポピュラーでないのはその辺にも理由があるのかもしれません。

 そうだ、日常のメンテナンス方法も書いとかなくっちゃな。使用後には、取っ手を下にして風通しのいい日陰に置いて乾かせばいいんだそうです。布とかで拭いたりする必要はないです。むしろ紙が傷むのでやめた方がいいです。完全に閉じちゃうと乾かないんで、ちょっと開き気味(あるいは完全に開いて)にするのが大事です。

 いや、ほんと和傘、イイですよ。ブーム到来希望。というかブームにしたい。

 さて、その後も浅草をぶらぶら。彼女はやま吉なる店で常滑焼の急須を買う。

 隣の箱長も興味深いお店。「桐木目込み」という技法が興味深い。店員さんの解説を熱心に聞く彼女。

 で、頃良い時間となったので、周辺をちょっとうろうろした後(正直に言うと少し道に迷いました)、Nちゃんのいる、浅草ビューホテルへ。ダンナのPさん(イギリス人)と共に我々を迎えてくれました。

 そのまま両家ご家族とご一緒して我々もカラオケへ。

 英語の歌が多かったです。いまいち英語を聞き取れず、自分の能力不足が悲しかったです。

 で、帰宅。寒かったけど充実した一日でした。……って、仕事しなくちゃいけないんだよーほんとは(がっくり)。明日がんばるとするか。

 

# ヨシヒサ 『和傘いいですねえ!!』